『ごはんのおとも』と、山下くんのお弁当
フーフー・・・ハム。・・モムモム・・・ンムンム・・・ゴクン。
フーフー・・ハフッ・・・・ンムンム・・ンフッツ、ブフッ・・・オホオホ・・ゴホッ・・ング。
・・・ハー・・ ・・・
あ、こんばんは。SATTYです。
いやぁ、すみません。お見苦しいところを。いや、いま食事中でして。優雅なレストランからお届けしています。ちなみにガストです。
毎日の中で、やっぱり食事の時間っていうのは大切ですね。美味しいもの食べたら、ホッコリ幸せになります。
三大欲求っていうじゃないですか。食欲、睡眠欲、性欲?人間の本能から芽生えるこの欲求って、すごく心に近いところにありますよね。
睡眠が足りないとイライラしちゃったりするし、性欲は恋心に繋がってますね。そして「食べる」ことは、ものすごく幸せを感じたり、懐かしくなったり、それからギュッと切なくなったりすることも、ありませんか?
私はたまに、人がご飯を食べてる姿をみて、なぜか猛烈に切なくなることがあるんですよ。
ご飯を食べてる時って、基本的にすごくみんな正直な姿になる。本能のままに動いているわけですから。 誰に見せるでもなく、着飾るでもなく、目の前にある食べ物と向かい合って、ただ食べる。
人の「 素」の姿が見えるというか。その姿に、すごい哀愁が漂ってたり、寂しそうだったりすることが、たまーにあるんですよね。本当のところ、知らないんですよ。本人はめちゃくちゃノリノリなのかもしれないし、勝手に哀愁漂わせるなって思われるかもしれないけど、あるんですよ。
それで、そういう光景を目にしたとき、いっつも思い出すことがあります。小学生のとき同級生だった山下くんのこと。今日はそんな話です。
ごめんな、山下くん
小学校4年生のころ、同じクラスにいた山下くん。確か3人の妹がいるお兄ちゃんやったかな。
山下くんは、結構なヤンチャもので、まぁよく先生に怒られてた。顔にも手にも傷をいっぱい作って、冬でも半袖で走り回りガハガハ笑うガキ大将。山下くんはいい子やったけど、ちょっと怖かった。
その日は給食がお休みの日で、みんな家からお弁当を持ってきてた。子供ってお弁当が大好きやから。待ちわびたお昼ご飯の時間、私たちはいつも以上にはしゃいでた。
すると、山下くんがこういう。
「お弁当のフタが、あかへん」
今でもあるかな、フタを閉めて両サイドのパタパタしたやつを、パチンって閉じるやつ。 あれさ、密閉されすぎてフタが張りついてまうことがあるねんよ。もうちょっとたつと、空気穴がついたやつとか出てくるんやけど、山下くんのお弁当箱は違うかった。
山下くんのお母さん、あったかいご飯をぎゅーぎゅーに詰めたんやろな、ピッタピタに張り付いて、横のパッチンを外しても開かへん。
「貸して」
私は山下くんのお弁当箱を受け取って、フタを外そうとがんばる。でも、ビクともせえへん。私が、意地になってウンウンうなってると、山下くんが先生に呼ばれた。
「山下、お前ちょっとこい」
あー、これまた怒られるな・・・と私は思った。先生の顔が明らかに鬼やったし、お弁当の時間に呼び出すとか、よっぽどやから。 山下くんは行ってしまった。私にお弁当を託して。
これは、開けたらなあかん、と変な気概をみせて私はウンウンとさらに頑張った。
ウンウンウンウン頑張ってたら、もう力を入れすぎてしまって、容赦なくなってしまって、アッて思った時にはもう遅かった。 開いてん、フタは開いてん。でもそのままひっくり返って、地面に落ちた。
教室の木の床の上に、逆さまになったお弁当箱。
ーやってしもた・・・・・・
とっさに私は、お弁当箱に手を伸ばして、拾い上げる。そしたらな、山下くんのお弁当は、それは見事な日の丸弁当で、山下くんのお母さんがぎゅーぎゅーにご飯を詰め込んでたから、お弁当はなんにもこぼれることなく、キレイに元通り。
・・・えっと・・これは、良かったんか・・?・・でも落ちたけど・・・ご飯は床についてしもたけど・・・えっと・・3秒ルールかな・・さっき掃除終わってるし・・・いや・・でも・・・・
小学4年生の私が、狼狽しているところに山下くんが帰ってくる。
山下くんは泣いていた。よっぽどこっぴどく叱られたんやろうか、しゃくりあげるほどに泣いていた。あの山下くんが。
・・・何してん、山下くん。なんで泣いてるん・・・
山下くんは、私が開けたお弁当箱をみて、一言泣きながら 「ありがとう」 と言った。 そして、そのまま、うぐっうぐっと泣きじゃくりながら、日の丸弁当を食べ始めた。
まっすぐにお弁当を見つめて、ご飯を食べる山下くんの背中が、あまりにも悲しすぎて、だってそのお弁当、私落としてしもたし、でも山下くんはもう食べてしまってるし、なんかよく分からへんけど、たまらなくなって、私も泣いた。
山下くんは、ちょっとビックリして「お前何泣いてんねん!」って言って、ちょっと笑ってた。その泣き笑いをみて、私の涙はまた吹き出した。
どうしても言えんかった・・・
「山下くん、お弁当落としてごめん」って。
ごめん、ごめんなぁ、山下くん。
私は今でも、ご飯を食べる人をみて、なんとなく切ない気持ちになった時、山下くんを思い出して胸がキュッと 痛くなる。
『ごはんのおとも』たな著
引用元:Amazon.co.jp: ごはんのおとも: たな: 本)
ごはんにまつわる、キュッと切なくなったり、幸せになったりする人たちの話が描かれた「ごはんのおとも」。私はグルメ漫画が大好きなのですが、この本は、最近の中で一番のお気に入りです。
描かれているごはんの絵が、それはそれは美しくて美味しそうで、眺めているだけでもヨダレとホッコリが一緒に楽しめるフルカラーの本。
ちょっと頑張りすぎちゃった男の人、初めての一人暮らしに家族を想う女子大生、長年連れ添った奥さんに先立たれたおじいちゃん、たくさんの人が集まる小さなお店の話です。
少しづつそれぞれの登場人物の人生が絡み合っていくこの物語を読み終わった時に、私はなんとも言えない幸せで切ない気持ちになりました。いいよ、すごく。
この本のことを紹介したくて、目の前できのこ雑炊をすすっているお兄さんを見てたら、なんだか切なくなってきて、山下くんに想いを馳せた今日の夜でした。
・・・・ピンポーン
「あ、すいません、抹茶プリンサンデーひとつお願いしますー」
あぁ、食欲が止まらない・・・
それでは今日はこのへんで。
また、次のお話で。
「わたしと×××、どっちが大事なの!?」を、ちょっと解説してみます。
by flashcurd
「だいたいいっつもさ、わたしのことなんてほったらかしじゃん!!」
ーピッ(一時停止)
こんばんは。SATTYです。
えー現在絶賛喧嘩中のカップルが一組。このセリフのあとに続く言葉、もしかしてあなたもご存知じゃない?はい、大きな声でーーー
『わたしと×××、どっちが大事なの!?』
はい、その通り!わりと有名な言葉ですね。ちなみに、このカップルの場合この名セリフを言っているのは女性の方です。これは男女入れ替わる時もありますね。ケースバイケースですね、はい。
このやりとりの感想としてよく聞かれることが、あります。「あー、それ言っちゃぁダメでしょー、そのセリフはダメでしょー」。これですね。だいたい、言われた彼氏とかが友達にその話をした時に聞く鉄板の感想ですね、はい。多いの、実に多いのこれ。
先ほども話した通り、カップルの喧嘩なんてケースバイケースですからね。一概にどっちがどーとか言えないんですけども。せっかくなんでね、わたし今日は全面的に『わたしと×××、どっちが大事なの!?』を言っちゃった方の肩をもってみたいと思います。
「どっちが大事なの!?」言った側の心境
まず言いたいのが、『わたしと×××、どっちが大事なの!?』って、言っちゃぁダメかもしれないけど、言わせちゃぁダメですよ。おっと、早くもブーイング、待って、待ってて。ちょっととにかく、言ってしまった彼女の声を聞いてみましょう。
ーピッ(解除)
スンスン・・スンスン・・グスン
「彼が新しい仕事を任されて、すごくチャンスなんだっていうのはわかってます。家に帰ってきても夜遅くまで仕事仕事。一生懸命頑張っているのは知っています。でもなかなか休みもとれないし、メールもなかなかくれないし、わたしといるより仕事している時のほうが楽しそうにすら思えるんです。わたしだけ何だか置いてきぼりをくってるみたいで、本当は応援してあげたいのに、できなくて・・・グスン」
ーピッ(一時停止)
・・ズビーーーーッ。聞いた?ねぇちょっと聞いた?もう、泣くわよ、泣きますよ。
生き生きと頑張る彼への羨望、嫉妬、寂しさ、不安、こういう複雑な感情が相まって、言いたくないのに言わずにいられない言葉、それが・・・・・あれ、違う?
何言ってんだ、こちとら仕事だってんだよってんだ?メール返してこないとかマジ勘弁してくれよ、こっちだってしんどいんだよーって。
やめてーーーーー!もう、やめたげてーーーーーー。
失礼。まぁおっしゃりたいことはわかるんですけどね、ちょっとわたしの話を聞いてください。
新しい変化は消耗する、でもきっと楽しい
人間って基本的に新しいもの好きですよね。新しい出会い、新しい仕事、新しい環境、新しい1日。変化は怖いけど、同時にものすごく心をときめかせてくれる。
刺激的ですよねー、夢中になりますよね。もっと仲良くなりたい、成果をだしたい、次はどうしようか、今度はどんなワクワクがあるんだろう、そんな風に思いません?
ところが、誰でも1日24時間。新しいものがそこに加わってくれば、どうなるでしょう。
時間、足りないですよねー、疲れますよねー。体と心に負担がかかる分、何かをやめなきゃいけなくなる。新しいものに夢中になればなるほど、後回しにするものもたくさん生まれます。
うまく調整できる人はいいんです。そういう人はだいたい『わたしと×××、どっちが大事なの!?』は言われない人なんです。
調整できない人、目の前のことに一生懸命になってしまう人は何を犠牲にするか?
きっと、許してくれるものから犠牲にしていく気がするんです。多少の無茶をゆるしてくれる「自分の体」かもしれないし、もしかしたら何を言っても許してくれる「大切な人」かもしれません。
大事な人ほど、許してくれる
あなたのそばにいてくれる人、あなたをわかってくれる人、応援してくれる人、そういう人こそきっと大事にしなきゃいけない。なのに、そういう大事な人ほど「許してくれること」「理解してくれること」「応援してくれること」をあなたはきっと知っている。
あなたが頑張らなくても当たり前のようにそこにいてくれる人を、「このくらいわかってくれるよね?」と、少しづつ犠牲にして、頑張らなきゃ手に入らない新しいものを手に入れようとしているんです。
ほらほらほら、ちょっとそんな気がしてきたでしょ。思い返せば一つや二つ、あるんじゃない?
なにも、頑張っているあなたを責めようってんじゃないんです。完璧なんて難しい。あっちもこっちも100%ができたらいいんだけど、そうもいかない。
ただ一つ、そのことを知っててほしい。余裕ができた時でいいから、本当は大事な人のことを大切にしてあげてほしい。気づいた時に、伝えてあげてほしい。
ーピッ(解除)
「はい、わたしです。SATTYです。いや、もうまさにわたしその状態でして、はい。あんまり毎日やることもたくさんあって、新しい出会いもたくさんあって、いつも側で見守っててくれる人のことを、悲しませてしまっています、はい。ごめんね、ごめんね。前も謝ったけど、本当にごめんね。ちょっと後で、電話するよ。ね、そこのあなた。ごめんね、いつも本当にありがとう。心から、はい。」
・・・
ザザザザザーーーー本日の放送は終了しました。
それでは今日はこのへんで。
また、次のお話で。
マクドナルドのポテトはどのように食べるのか問題における、ある男女のトラブル
男女とは、進化し続ける奇跡である。
わたしのような若輩者が語るには少々大きすぎるテーマであるが、今夜は勝手ながらこの男女という生き物について、真面目に語ってみたいと思う。
マクドナルドのポテトはどのように食べるのか?
男女を語るために、まず考えていただきたいことがある。わたしの記憶では確か10年以上前から、根深い問題として議論されていること。
『マクドナルドのポテトはどのように食べるのか問題』である。
引用元:McDonald's Japan
今のところ、わたしの周辺においてマクドナルドのポテトを食べたことがない人はいない。みなが、小さなころから親しみ愛し続けている味の一つだと考えている。
ケンタッキーじゃないねん。マクドのポテトが食べたいねん。
これは、わたしの故郷で頻繁に発せられるワードである。太さ、塩気、食感、そのすべてにおいて、人々は大きな関心をよせている。
まったく男女に触れないままにここまで書き連ねていることから、ある程度は察していただきたいのだが、わたしもまた、マクドナルドのポテトを愛する一人である。
物心ついたころから、わたしの側にはドナルド・マクドナルドがいたし、赤く光る唇に吸い込まれそうになった。「アイム ラビニ!」これを耳にしたら条件反射で体がポテトを欲するまでに成長してしまった。
このポテトには、大きく二つの派閥があると思っている。カリカリ派とへにゃへにゃ派だ。
スナック菓子ばりに水気のとんだ、カリカリのポテト。時に口中攻撃をしかける凶器と化すカリカリしたやつ。これを愛するのがカリカリ派だ。
対して、やや黒ずんだロングサイズで、持ち上げると同時にへにゃへにゃと腰を折るへにゃへにゃポテト。歯ごたえや香ばしさから最も遠い場所にいる、このへにゃポテにも熱狂的なファンは多い。わたしはこの派閥に属している。
ちなみに、世の中には、このどちらの派閥にも属さない猛者たちもいる。食べれたらいい派だ。わたしはこれをまだ認めていない。
さて、長らくお待たせした。わたしのポテト愛について知っていただいたところで、本題に入ろう。
今日お届けしたいのは、これほどまでに人々のこだわりに満ちたマクドナルドのポテトをめぐる、男女のトラブルにまつわるお話である。
ある男女のマクドナルド事件
わたしはS子。大好きなD夫さんと一緒に暮らしています♪
ー彼らはどこにでもいる、平凡で平和な男女だった。
土曜日のお昼ゴハン嬉しい♪今日も明日もふたりで一緒に過ごせるんやもん♪
D「お昼どうする?マクドにせーへん?」
S「いいねいいねーー♪」
息ぴったりのふたり♪一緒にマクドナルドまでドライブして、ドライブスルー。お持ち帰りをして、おうちで一緒に新喜劇みながら食べるんだ♪
マクド「ご注文どうぞー」
D「ビックマックセット」
S「ダブルチーズバーガーセット♪」
マクド「ただいまポテトLサイズに無料でできますがいかがですかー?」
D「そんな食べれへんやんな」
S「うん!大丈夫でーす」
ブウゥゥゥゥゥウウン
ーこうしてふたりはドライブスルーで購入したマクドナルドを両手に抱え帰路につく。これから起きる惨劇など知らずに。
S「いいにおいーーーーー」
D「食べよー」
ふたりでテレビを見ながら、パクリ♪おいしぃ〜〜〜〜!
わたし、ポテトが大好き♪中でも、へにゃんへにゃんのポテト、めっちゃスキーーー♪
あ・・これはカリカリ。これもやー、一本パクリ。おいしいけどー♪
あー!へにゃへにゃあったー、あとで食べよ♪ふんふ〜〜ん。
<TV 『ナンデヤネン!』・・ドッ(笑い声)>
D「あっはっはっ」
D夫さん、超楽しそー。・・・・え?ポテト食べるん、めっちゃ早いやん。もう半分ないやん。
ーこの時、S子は胸の中で「イヤな予感」を感じたという。虫の知らせとはこのことだと思った・・それが後日S子から聞かされたセリフだ。
えっえっ、いっぺんに3本も口にいれるん?てゆうか、もうポテトの方見てないやん。カリカリーとかへにゃへにゃーとか、そういうのないん?手が勝手にポテトとって口に運んでるだけやん。もっと大事に食べな・・
D「うまいな」
S「う・・うん。」
ーボソボソとダブルチーズバーガーとポテトを食べるS子。そしてついにその時がやってくる。
・・・ガサガサガサ・・
!!!!!!!!
わたしの・・!ポテト・・・・!!
食べたよねぇ、今、わたしのポテト、食べたよねぇ!!ちょっと待って!大事に大事に食べてんのに?なんで?なんなん?それなら、Lにしたら良かったやん。なんて言ったらいい?ダメって言ったら、怒るかな。どうしよ、そんなん言われへん。いやや、でもポテト・・
D「あっはっはっ」
S「・・・・・」
ーS子はあまりのことに、食べることを忘れて言葉を失い、ただD夫によって荒らされていくポテトを見つめた。彼が食べれたらいい派の猛者だということは、言わずもがな、だ。
D「なんなん?どうしたん」
S「・・・・」
D「なんやねん」
S「・・・・・」
ーながれる気まずい空気。そのとき、彼女の愛するへにゃへにゃに、D夫の指が伸びた。
S「・・・しのポ・・・」
D「なに?」
S「・・・たしのポテ・・・」
D「なんて?」
S「わたしのポテトォォォォォォォオ!!!!」
D「・・・・あ、これ?ごめんて、ごめんごめん。なんや、あはは」
ーD夫はS子のポテトを食べることをやめた。S子はボソボソとまた、ポテトを食べ始める。彼の横顔が、心なしか寂しそうに見えて、S子の胸は痛んだ。
なによ。めっちゃ減ったし。モグモグ。食べすぎやって。モグモグ。へにゃへにゃとっておいたのに。モグモグ・・・。
・・D夫さん、食べたらあかんて言われてなんか、かわいそう。おいしくない、なんか。ポテト・・・
S「・・・これ、いいよ。」
D「ええよ、食べ」
S「いい、あげる。」
D「ほんま?ありがとー」
へ、へへへ・・・。D夫さん、笑った。よかった。次からは、もう絶対Lサイズにしよ。
S「あ、へにゃへにゃや!これ食べる」
D「食べー、これが好きなん?」
S「うん」
D「これもへにゃへにゃやでー」
S「ほんまや、カリカリのやつは食べていいで」
D「おー」
S「あっ!そのへにゃへにゃ!」
・・・
男女の絆はこうして深くなっていく
さて、この話を聞いてもらっていかがだろうか。
女、めんどくさすぎ?Yes!話ちっちゃいだろ?Yes!その通りだ。
たかがマクドナルドだと、思うことだろう。しかし、男女のすれ違いなんて、突き詰めれば本当に小さなものなのだ。
生きてきた時間も場所も環境も異なる男女が、ともに暮らせばこんなささいな感覚の違いは山のように出てくる。そういう一つ一つを寄せ合っていくやりとりが、ふたりの関係を作り上げていく。
そんなちっぽけなことすら歩み寄れなければ、いずれほころびが出るだろう。そんなちっぽけなことを共に積み重ねていけば、いつしか固い絆になるだろう。
好みや価値観を少しずつ伝え合っていくこと。それを放棄しては関係など育たない。
思いのほかに真面目なことを語ってしまったようだ。少し恥ずかしい。とにかくわたしはこれが言いたかった。
それでは今日はこのへんで。
また、次のお話で。
30年後の作文「わたしのおとうさん」
わたしの家は、おとうさん、おかあさん、おにいちゃん、わたしの4人家族です。
おにいちゃんは、サッカーチームに入っているので、土よう日はいつも練習があります。おかあさんも、おにいちゃんといっしょにサッカーの練習についていきます。
冷たいお茶を用意したり、応えんをしたり、お友だちのおかあさんとお話したり、おかあさんも大変です。
だから、土よう日におかあさんとおにいちゃんは、家にいません。半日授業が終わって、家に帰ったら、いつもわたしはおとうさんと二人だけでお昼ごはんを食べます。
土よう日のお昼ごはんは、チャーハンです。
おかあさんが出かける前に作っておいてくれます。 フライパンの中にちょっと茶色いチャーハン。山もりのチャーハン。ピーマンとハムとたまごが入った おしょうゆ味のチャーハンはとてもおいしいです。でも上の方だけちょっとかわいてカピカピになっているのが、たまにきずです。
おとうさんは、いつもチャーハンを食べる前にわたしにいいます。
「おみそしる、作ろうか」
おとうさんは、おみそしるが好きやなあと思います。 チャーハンを食べるときには、おみそしるがないとダメみたい。 私はなくても平気やけど、おとうさんが作ろうといったら、私は「いいよ」と言って、おとうさんといっしょにつくります。
おみそしるの作り方はとてもかんたんです。すぐにできます。
「わかめと油あげのおみそしるにしようか」
おとうさんはわかめが大好きなので、だいたいいっつもおんなじ具です。
好きやなぁ、ほんまに。いつも私はそう思います。
塩がいっぱいついたわかめをボールにいれて、お水であらいます。
わかめはお水につけると、いっぱい増えるので、あまり出しすぎたらわかめだらけになるのでダメです。 少ないくらいでだいじょうぶです。
わかめをしっかり洗ったら、包丁で切ります。このままだと食べにくいからです。わたしは包丁をつかって、わかめをちゃんと切ることができるようになりました。
あぶらあげも、細長くきります。ちゃんと切らないと、下がつながって、おとうさんに笑われるので注意しないといけません。
具がきれたら、つぎに小さいおなべにお水をいれます。 おなべはいつも、台所のいちばん上のたなにあるので、おとうさんがとってくれます。
もうちょっと背が大きくなったら、ひとりでもとれるようになると思います。
お水をいれたおなべは重たいので、気をつけなければいけません。 このお鍋は持つところがぐらぐらしているので、注意しないと、お水がこぼれてしまいます。
お水をいれたおなべをコンロにおいたら、火をつけて、ぼこぼこと泡がでてくるまでまちます。 そうしたら、ダシのもとをいれます。ふくろの半分よりちょっと少ないくらいです。
わたしはこのダシのもとが大好きで、いっつもちょっとだけ手にのせて、ペロッとなめます。 しょっぱくておだしの味がしておいしいのです。でも、おかあさんに見つかったらおこられるのでないしょです。
ダシのもとを入れたら、さっき切ったわかめと油あげをいれます。
「やけどするぞ、きぃつけよ」
おとうさんは、いつもそう言います。
だいじょうぶ、だいじょうぶ。
さわったらアツいことなんて、知ってるのに、おとうさんはしんぱいしょうです。
あつあつのお鍋にいれると、わかめがパッと緑色になって、キレイです。 でもやっぱりちょっと多かったみたい。わかめだらけになりました。
そうしたら火をけして、おみそをいれます。ここからが、むずかしいところです。
おたまにおみそをちょっと入れて、おなべにチャポンとつけて、お湯をちょっとだけおたまに入れます。 それから、おはしでちょっとずつおみそをとかしていきます。
しっぱいしたら、とけてないおみそのかたまりがおみそしるの中にはいって、しょっぱくなってしまうので 注意しないといけません。
おみそをとかしたら、味見をします。味見をしながら、ちょっとずつおいしくしていくのです。
「これくらいかなぁ」
「ちょっとうすいんちゃうか?」
「ほんなら、これくらいかなぁ」
「もうちょっとやな」
「ほんまに?じゃぁ、こんくらい?」
「しょっぱい!しょっぱいなぁ」
「ほら、ゆうたやん」
しっぱいしたら、ちょっとだけお水をたして、うすめたらだいじょうぶです。
「これならどう?」
「よしよし!できたできた」
おとうさんの分と、わたしの分と、おわんによそって。
チャーハンもよそって、レンジでチンしたら、やっとお昼ごはんです。
「おいしいなぁ、おみそしるようできたやんか」
土よう日のいいお天気。テレビを見ながらおとうさんと一緒のお昼ごはん。明日はお休みです。どこにいこうか。
おいしいなぁ、おいしいなぁ、
おいしかったなぁ、お父さん。
あとがき
こんにちは。SATTYです。
父の日でした。今年はちょっとお高めの焼酎を、実家の父親に送りました。なんにもメッセージもつけずに、愛想のない娘やなぁと、そんなことを考えていたら、ふいに思い出された昔の風景。
小学生の私が、父と一緒にいっつも過ごしたふたりきりの土曜日。あの当時、父が唯一作れる料理は「おみそしる」で、母が帰って来たらふたりで作ったんだと自慢していたような、そんな記憶がうっすらと残っています。
あれは私にとっての、おやじの味やなぁ。まだ小さな子供だった私と、若かったおとうさんの土曜日のお話。
それでは、今日はこのへんで。
また、次のお話で。
自薦と他薦の摩訶不思議。人の目を気にすることと、人の目から知れること。
こんばんは。SATTYです。
「君ってどんな人?」
そう聞かれたら、どうこたえます?ちょっと答えにくいな、もうちょっと噛み砕いたとしたらこんな質問。
「君のチャームポイントを教えてよ!」
これならどうでしょう。チャームポイントって今でも使うかな、使うよね?
要は、自分をPRしてよ!って言われた時に、どうやって答えるか。私はこれが苦手なんですよ。苦手だって気づいたんですよ。
なぜかって、「自分が思う自分のいいところ」を聞かれているだけなんだけど、きっと知らない間に「人がきっといいと思ってくれるであろう自分」を探してしまうからではなかろうかと、たぶん。今日はそんなお話です。
自薦記事募集!Twitter上で話題となったコトバコさんの企画
ここ数日、私のTwitterタイムライン上ではとある企画が話題をさらっています。
しむさん(@46sym)が運営している「コトバコ」というブログの中で発表されたこの企画。自分の書いたブログの中で「これ読んでくれー!!」という1記事を、自薦して持ってこいやっというものです。(注:ご本人はこんな言い方しません)
すでに50人ものブロガーさんが、自慢の自薦記事をしむさんに送っている模様。(残念ながらすでに募集は締め切られています)ちなみに、自薦記事は、5本づつ10回に分けてしむさんがコトバコの中で紹介してくれています。
これ私、とても面白い企画だなぁと思ったんですよね。紹介されている記事の中には、私が常日頃よく見ているブログもあったりするんですが、ブロガーさん自身の「自薦」を知る機会ってなかなかないと思いません?
でですね、私もこの企画に参加してみたんです。たくさんの人に読んでもらえるチャンス!しむさん紹介してくれやっという気持ちを込めて、自分のブログから1記事を選んでみようと。
「自薦」って思いのほかに難しい・・・
こんな面白いのに、なんで読んでくれないわけー、マジでよー。
それが、The 自薦。
俺のブログは世界一おもしろいぞおおおおおお!というアピール
ーコトバコより
これが、The 自薦。
つまり、たくさん読まれたかどうか、評判が良かったかどうか、ではなく、自分自身が「面白いからオススメしたい」記事。それが、自薦記事なわけですね。
ところが私の脳内には、様々な雑念がうごめきました。
以下SATTYの心の声。
ーこ、これは、ちょっと、ハズくない?いや、確かに思い入れあるけどさ、ハズい。まじでハズい。これだいぶ酔っちゃってるよねー、自分に酔っちゃってる。やっぱハズい。今さらこの記事とか・・なしだな。書いた当時はイケイケだったけど、これ、なに考えてたんだろ?封印!封印!・・・
と、まぁこのような感じで、臆病な私は自分のオススメしたい記事ひとつ選べないという状況に陥ったわけですね。どれも大事な記事なんやけど、どれも自信がない、自薦できないという。
この時、間違いなく私の脳内にいる、リトルSATTYは他者の目を意識していたんだと思うんですよ。「これが自薦っす!」「確かにおもしれーーーー!」という、理想のラリーが生まれる記事は、どこにあるんだと。
しむさん、すみません。完全に自薦の目的を見失い、自己アピールという名の蟻地獄に引きづりこまれました。私はいやらしい大人になってしまいました。
ねぇ!ねぇ!見て!これ上手に書けたでしょ!といって、下手くそな父の絵を自信満々に見せていた幼い日の私はもうどこにもいません。
自薦記事を紹介されるという、嬉し恥ずかし
とにもかくにも、ひとつの記事を私はしむさんに送りました。ちゃんと紹介していただけましたよ!
とても丁寧に紹介いただいて、感激でした。実際この記事の公開前に、おそらくしむさんが何ページも読んでくれたんではあるまいか・・と思われるアクセスの痕跡があって、胸が熱くなりました。同時に、世間の体裁を気にした己を心から恥じました。バカ。私のバカ。
言い訳がましいですが、自分でも気に入っている記事には違いないんですよ。自薦コメントに嘘はありません。大事な記事なのですよ。それでも、「この記事をミロォォォォォォォォォオ」と胸をはって自薦するのは勇気がいるわけです。
ーちょっと脱線しますが、このしむさんの「コトバコ」は、私ブックマークして読んでいるんですけど、しむさんの言葉のチョイスとか、テンポとか、そういうものがとても好きなんです。この企画でも、それぞれの自薦記事をとても丁寧にしむさん節で紹介されていて、これは自薦したブロガーも本当に嬉しいと思います。
ちなみに、私が一番好きなしむさんの記事はこれ。
私はこれで、コトバコのファンになりました。
自薦と他薦
このしむさんへの自薦やりとりを見て、普段からTwitterで仲良くさせてもらっている方から、このようなコメントをもらいました。
@NeoSatty おもしろいね。サティちゃんのブログは最初から全て読んでいるけど、自薦するのはこの記事なんだぁ!って(*^_^*)どれも素敵だから迷っちゃいますよね!
— sachiko (@sasyrrs) 2015, 6月 11
@sasyrrs もんのすごい迷いました〜思い入れあるのは別にあるんだけど、推薦するかとゆうと違うなーとか(´・Д・)」最初から知ってるサチコさんならどれを選んでくれるのか知りたい!
— SATTY (@NeoSatty) 2015, 6月 11
@NeoSatty 私ね、チャーミーグリーンの話。あれ凄く好き♬あとは広告のキャッチコピーとか、いい人でいいやん!のとかも好きだなぁ(*^_^*)
— sachiko (@sasyrrs) 2015, 6月 11
サチコさん、好きだ・・。
サチコさんが好きといってくれたチャーミーグリーンの話は、ものすごい空想話です。ちょっと前の私は本当にこうなんというか・・頭に浮かんだ空想(ポエムともいう)を書き散らかしていたわけですよ。
ただ、自分の中ではもう「読まれない記事」認定をしていた悲しい記事でもあったわけです。SATTYは誓っていました。意味のわからないポエム記事は、もうやめよう・・と。
ところが、サチコさんは言いました。あの記事が好きだったよ、と。まちがいなく「自薦」しない記事が「他薦」されたわけです。これは私の中で、かなり大きな革命的発見だったんですね。
おそらくサチコさんのこのコメントがなかったら、私はもうチャーミーグリーンのような記事は書かなかっただろうと思うんです。もしかしたらサチコさんのように、楽しく読んでくれる人がいるかもしれないのに。
ーちなみにまた脱線します。サチコさんのブログ「人生楽しんだもん勝ち♫」。私は毎朝の通勤のときに読んで、ちょっと勇気とか元気をもらっています。
最近読んだこの記事、感動してしまった。
まとめます。
「自薦」したいのに「他薦」されない記事もあれば、「自薦」しないけど「他薦」される記事もある。結局のところ、誰が何を感じてくれるかなんて、わからないもんです。
「人がきっといいと思ってくれるであろう自分」にとらわれて自らの世界を狭めてしまうのは、もったいない。
また、自分が見えてない自分のいいところを見つけてくれる人も、たくさんいるんですよね。自分を曲げる必要はないけれど、人の声に耳を傾けて、自分の可能性を広げていくのは、嬉しいことじゃぁありませんか。
読者が求めているもの、を考えるのも大切なこと。だけど同じくらい、読者が見つけてくれるもの、もあるんだなぁ。そうなんだなぁ。
ということで、SATTYのブログには、また空想ポエムも復活するだろうかと思いますので、その時はどうぞ優しい目で眺めてやってください。
いつの日か、自信満々のドヤ顔で「この記事をよめぇぇぇぇぇぇぇぇえ」と、しむさんに送りつけることができる日がくるまで、私は頑張ります。
さて、それでは今日はこのへんで。
また、次のお話で。
『楽しい』より強いものって何かあるかな。LIGのいいオフィスで考えた素朴な疑問。
こんにちは。SATTYです。
今日はとある取材のため、1日外を出歩いていました。天気がいい日(しかも平日)に外を散歩できるというのは、至福の極みでありますね。
待ち合わせの時間ギリギリだったので、超絶ダッシュだったんですけども、行ってきました。LIGの「いいオフィス」。
ご好意で中を見学させていただきましたが、なんとまぁ・・びっっくり。噂には聞いていましたが、ヒラメキを発生させるにふさわしい場所でした。
ここには書けないんだけど、いろいろお話しをしていて思ったことがあります。つくづくと。
この人たちは『働く』を楽しんでいる。そして、『楽しい』は強い。
『楽しい』は強い
これまでの人生、いろんなことがありましたが、「いいもの」が生まれる時って、だいたいが携わる人みんなが楽しんでいる時なんですよね。
アドレナリンが出まくっていて、誰かが止めないと、ずっと夢中でそのことばっかり考えている。そんな時。そういう瞬間に立ち会えることって、ものすごく幸せだなと思います。
昔、舞台のスタッフをしていたとき、こんなことがありました。公演が近づくと、役者さんはもちろんですがスタッフもかなり過酷なスケジューリングで動くんですね。
立ち稽古に付き合うのはもちろん、照明の確認、小道具のセッティング、音響チェック、転換の確認、その他もろもろ。1日中の立ち仕事で、体力も消耗するし、緊張感もはんぱない。
ぴーんと張り詰めた空気の中で、とびかう怒号。まぁもう、ぐったりですよ。それなのに、終了後に飲みにでかけると、みんなその「続き」を始めるんです。
あの場面は、こうした方がいい。この演出を明日試してみよう。さっきまでキレまくっていたごっつい照明のおっちゃんが、目を爛々とさせて、大笑いしながら、本番に舞台で上演されるだろう世界に夢を見るんです。明日も早いんだから、早く寝りゃーいいのにね。
今でこそ定時がある仕事についている私ですが、そのころは、一日中働いているみたいなもんでした。公演が近づくと、確実にやせるし。今全然やせないけど。
楽ちんだったかって聞かれたら、どんでもないと答えます。キツかった、かなり。
じゃぁなんでそんなことやってたの?って言われると、『楽しかった』から。それに尽きると思うんですよね。
あのときの同志だった、怖いおっちゃんも、他のスタッフも、もちろん役者さんも、みんな楽しかったんだと思う。あの時間を、めちゃくちゃ愛していました。
そしてその中で作り上げられた作品は、理屈抜きに、心が震えるほどの価値あるものだったと思う。
『できる』ことより『楽しい』ことを追求したい
結局のところ、どれだけ目の前のことを楽しめるか、だと思うんです。もちろん、楽しいとキツイは、一緒にやってくることもあるけど。
楽しんで仕事してる人は、いいもの持ってくるし、楽しんで恋愛してる人は、いい関係築いてるし、楽しんでる笑顔なんて・・最強じゃない?
楽しいから乗り越えられるし、楽しいから追求したくなる。あとは、自分の細胞が「楽しい」と叫べる何かにたどり着けるか。それだけなんじゃないかなって。
あると思う、どんだけ楽しんでも突き進んでも、辿り着けない場所っていうのも。でもその過程がその人にとって猛烈に楽しかったんなら、最終的にその人生楽しかったってことで。やっぱり幸せじゃないかな。
できるかできないか、よりも自分の感覚を信じて生きてみたいやん、そんなことを考えたとある一日。
いや〜しかし、「いいオフィス」最高だった。また行こう。
それでは、今日はこの辺で。また、次のお話しで。
西荻窪でお一人様グルメ紀行。『フレンチカレーSPOON』のオリジナルカレー
食は万里を越える、どこかの誰かがそう言っていた。王将超好き。
今日も胃袋にこんにちは。SATTY@グルメレポーターです。
本日訪れるお店は、西荻窪にあるカウンター11席だけのカレー屋さん『フレンチカレーSPOON』。さぁ、束の間の食紀行をお楽しみいただこう。
カレーと空腹の相性
ものすごくとてつもなく腹が減った時に、食べたくなるものとは何だろう?私は迷わずカレーライスと答えたい。今日はカレーだな、と脳が反応したとき、それ以外の選択肢はだいたいが出番を失うものだけど、私の場合、脳に合図を送っているのは空っぽの胃袋だと思っている。
空腹の胃袋に流し込まれるスパイスのファンタスティック・イリュージョン。訳すると、たまんねぇ、うまい。鼻から感じる刺激は食欲を最大限に引き出し、やつらは完全にその欲求を満たしてくれる。
家庭の味ももちろんたまらないけれど、手をかけて育てられたお店のカレーも素晴らしい。ここのシェフさんは、どんな手をつかって楽しませてくれるわけ?誰にでも作れる一皿だからこそ、料理人の腕がためされるもんだ。
フレンチカレーSPOON
さて、西荻窪にある小さなカレー屋『フレンチカレーSPOON』は、少し小洒落た店である。ガラス越しに見える店内には、カウンターのみ。年配の夫婦や、女性2人組がワインを片手にカレーを楽しむ姿がうかがえる。
正直いって、お一人様初心者さんには、やや難易度が高い。そもそも「カウンター」×「フレンチ」という組み合わせが敷居をあげる。ただこの組み合わせが女心にヒットするタイミングというものもある。おそらくこの日は、西荻窪というシチュエーションがそうさせた。
一人歩くはじめての街。のんびりと喫茶店で戯れた文庫本に描かれた日常。夕暮れが迫る赤紫色の空。そのすべてがこう言う。下手なもん食べて帰るんじゃぁないぞと。
ちょっとだけ贅沢で、お一人様の夜を満たしてくれる、今日という日の終わりにふさわしい食事。それが今日の『フレンチカレーSPOON』。
お一人様、おもてなしします。
店内に入ると、お一人様の不安はたちまち消える。カウンターの中から、落ち着いた笑顔を向ける店員さんたち。気持ちのいい食事は、気持ちのいい店でこそ味わえる。
おそらくかなりお一人様を歓迎してくれる店だろうと思う。ふらりと立ち寄って、お酒とカレーと、ちょっとおしゃべりを楽しんで帰りたくなるような、そんな雰囲気。
丁寧に説明してくれる店員さん、普段より少しだけ笑いかけたくなるもてなし。決して広い店内ではないけれど、ギュっとつまった感じがまた居心地よい。
大人とオードブル
このお店の特徴は、本格的なオードブルを楽しめるところだ。季節のスープ、白レバーのムース、フォアグラのフラン。フレンチ出身のシェフによる前菜たちは、見た目にも美しく、かなり気合の入ったそろえぶり。ちょっと気取って「いい気持ち」になりたい時には、ぜひオススメしたい。
私がチョイスしたのは、『トマトのムースとレモンのジュレ(¥790)』。グラスに盛り付けられたそれは、なんとも涼やかで、よく冷えた透明なグラスごしに鮮やかなトマトの赤がそそる。
一口・・・・・・んふ、うまい。
レモンジュレは優しい酸味であっさりと溶ける。そしてその下にあるトマトムースは滑らかで少し濃厚。ねっとりと舌に絡みつく。
お一人様が、カウンターでオードブル。大人の階段、3段くらい登った瞬間。
よくできた前菜は、その後のメインディッシュへの期待感をいやが上にも高めてくれる。
フレンチカレーは気が強い
ついにおでましの看板メニュー『フレンチカレー(¥930)』。ちなみに2/3サイズ(¥730)も用意されているのが嬉しい。オードブルを楽しみたいならこのサイズがちょうどいいあんばいだろう。
カレーのてっぺんでテカテカと光っているのは、牛肉の赤ワイン煮。ホロホロというか、トロトロというか、ホリュハラ・・ハヒン、という感じに解けていくほど柔らかい。ご飯は13穀米、好みで白米にも変更できる。
想像していたフレンチカレーは、どちらかというと濃厚甘めだったのだけれど、あなどるなかれ。これがなかなかのスパイシー娘。コク深いが、香りが立つシェフの味。なかなか家庭では再現できそうにない。いい意味でかなり癖がある個性的な仕上がりだ。
前菜でクリーミーに潤った舌先に、ビシっと攻めてくる気の強さ。・・すき。
ゆっくりと口に運び、しっかりと噛みしめ、ちょっと斜め上あたりを眺め、ほどよい人の賑わいを感じる。
今・・贅沢な時間、流れとるやん・・。
『フレンチカレーSPOON』の、プチ贅沢ディナー。
ごちそうさまでした、また来ます。
本日のお店
フレンチカレーSPOON