眠気に強炭酸×強カフェインと噂の「ペプシ ストロングゼロ」は効かなかった、私の場合。
午後二時。やつがやってきた。
やろう、足音もたてずに忍び寄ってきやがった。学校で授業にいそしむスチューデンツや、エクセルとにらめっこするビジネスメンを、瞬く間に恐怖のどん底へと突き落とす、憎むべき存在。
やつの名は睡魔。
誤解してほしくないのだが、私はというとそれは真面目に働くことを希望していたのだ。働きたい、、働きたい、、あぁ働きたい、とうなされるほどに、山積みとなった資料作りに取り組もうとしていた。はず。
しかし、背後からスルリと近づいてきたやつに、「あなた、今から働かなくていいから・・」という、リストラ肩たたきばりの有無を言わさない威圧感でもって、脳内をトントンされた。
ホァ。私はその非情な宣告を受け入れるしかないのか。悔しさのあまりに歯ぎしりでもしてしまいそうだった。実際には、だらしなくも半分ほど口を開いたただの会社員がそこにいたはずだ。
しかし、私は思った。生きるために、定められた時間を働かねばならない会社員である以上、甘んじて受け入れている場合ではない。たとえ、勝ち目のない勝負であろうとも、あきらめたらそこで試合は終わるのだ。誰ががいっていた。
なんとか、やつを倒す術を見いだしたい。生きるために、生き抜くために 。画期的な必勝法にたどり着いた暁には、全世界の戦うビジネスメンから、羨望のまなざしでもって讃えられるはずである。伝説の偉人として、歴史に名を刻む、それも悪くない。
朦朧と重くなる瞼と、崖っぷちギリギリの戦いを続けながら、ただでさえ弱りつつある脳みそを駆使して、ありとあらゆる可能性を考えた。
眠気にあらがう方法を試す
親指と人差し指の間、眠気に効くというツボを全力で刺激してみる。痛気持ちいいだけで変化なし。少々お腹がゴロゴロとうなりだし、予想外にトイレに駆け込む羽目になる。おそるべし、睡魔。
ついでに、カフェインを大量摂取してみる。強炭酸×強カフェインと噂の「ペプシ ストロングゼロ」。
これさえあればメッタメタのボッコボコだ。一口含んで、ビリビリくる刺激に勝利の祝杯をあげそうになるも、いかんせん持続力に乏しすぎた。1コンマ3秒後。すでに眠い。
こいつは・・飲み続けなきゃぁ、ダメなやつだ・・
違うのだ、私はただ働きたいだけなのだ。ここでひたすらコーラを飲んでいるわけにはいかない。しかも、超刺激コーラを悲痛なまでに暗い顔でなめている私に、周囲が疑いすら持ち始めている。「こいつ・・眠いんじゃね?」事態は深刻だ。
眠気の原因は・・・神だった
アプローチを変えてみた。そもそもなぜこれほどまでに眠いのか。原因をつきとめ、根本から根こそぎバスターだ。
そもそも眠気とは何なのか、それをまず調べる。すると眠気の元となる「睡眠物質」にアデノシンというやつがあるらしい。
参考:なぜ、コーヒーを飲んでも眠くなるのか? | ビーカイブ
やつの正体はこいつか。アデノ・・神・・。いかにも支配力の強そうなやろうだ。
アデノ神は、脳内に居座り一定レベルを越えると私の脳みそが「もう寝た方がいいよ」と、やさしい彼女みたいに潤んだ上目遣いでささやくらしい。
貧弱な脳みそめ。つまりはこういうことか。
アデノ神「くかかかか・・・おろか人よ。働くがいい。なにも知らずに呑気なものよ」
脳みそ「うぅん、うぅん、アデノ神さまぁ。そんな意地悪しないでくださいー」
アデノ神「やかまし!ほーら、もう少し、もう少し」
脳みそ「きゃーーーー」
アデノ神「越えたーーー許容値越えたーー、ほれ!行ってこい!」
脳みそ「もうちょっと待ってください・・」
アデノ神「もうダメー、これ以上待てないー」
脳みそ「ひーーん・・いってきますぅ・・」
・・・
・・
「ねぇ・・・もう・・・寝よ?」
・・というわけだろう。知らんけど。
食べたら眠くなるとかのダブルパンチ
さらに私は恐ろしい事実に気づいた。・・・天丼だ・・・。昼に平らげた天丼が私の胃袋にデンと居座り、いっこうに消化の気配を見せないのが、うっすら気がかりではあった。今やおそらく胃袋には体中の血液という血液が集結している違いない。
くそっ、つまりはこういうことか。
血液「すまん・・俺・・胃袋んとこいくわ・・」
脳みそ「ずっと!私のそばで、見守っててくれるって!いったじゃん!」
血液「あいつ、俺がいなきゃだめなんだ・・」
脳みそ「なんで・・?ねぇ、なんで?」
血液「天丼がさ、天丼があいつを苦しめてるんだ・・」
脳みそ「ひどいよ、わたし・・眠くなっちゃうよぉぉ」
血液「おまえなら、大丈夫だよ。一人で頑張れる子、だからさ」
いつだって、弱い女には勝てないっていうのかよぉ・・。そんなことはどうだっていい。
結局眠気に勝つにはこれしかない・・
私はアデノ神にぶちのめされて、さらには惚れた血液にすら捨てられるというズタボロ状態のまま、ひたすらツボを押し続け、持続性のないペプシをなめ続けた。
しかしそれも時間の問題。いつしか意識がとぎれがちになり、瞼がついに世界を遮断しようとした、そのとき。
ぺらぱーぴぴーぽろろーぴぴぺー
私のケイタイの着信がなった。まぬけなラッパのメロディーにビクリと体が反応する。
バクバクバクバクと心臓が波打つ。さっきまでのアデノ神なんぞ、どこのどいつだと言わんばかりに、私の脳内は覚醒した。
いつだって、結末は突然に訪れる。私の脳裏には、高らかと勝利の拳を突き上げる心の臓の姿が見えた。まごうことなき英雄の姿が。
救いはいつも己の中にある。それを呼び覚ませるかどうかは、自分次第だ。
と、いう懺悔をここに。
それでは今日はこの辺で。
また、次のお話で。