30年後の作文「わたしのおとうさん」
わたしの家は、おとうさん、おかあさん、おにいちゃん、わたしの4人家族です。
おにいちゃんは、サッカーチームに入っているので、土よう日はいつも練習があります。おかあさんも、おにいちゃんといっしょにサッカーの練習についていきます。
冷たいお茶を用意したり、応えんをしたり、お友だちのおかあさんとお話したり、おかあさんも大変です。
だから、土よう日におかあさんとおにいちゃんは、家にいません。半日授業が終わって、家に帰ったら、いつもわたしはおとうさんと二人だけでお昼ごはんを食べます。
土よう日のお昼ごはんは、チャーハンです。
おかあさんが出かける前に作っておいてくれます。 フライパンの中にちょっと茶色いチャーハン。山もりのチャーハン。ピーマンとハムとたまごが入った おしょうゆ味のチャーハンはとてもおいしいです。でも上の方だけちょっとかわいてカピカピになっているのが、たまにきずです。
おとうさんは、いつもチャーハンを食べる前にわたしにいいます。
「おみそしる、作ろうか」
おとうさんは、おみそしるが好きやなあと思います。 チャーハンを食べるときには、おみそしるがないとダメみたい。 私はなくても平気やけど、おとうさんが作ろうといったら、私は「いいよ」と言って、おとうさんといっしょにつくります。
おみそしるの作り方はとてもかんたんです。すぐにできます。
「わかめと油あげのおみそしるにしようか」
おとうさんはわかめが大好きなので、だいたいいっつもおんなじ具です。
好きやなぁ、ほんまに。いつも私はそう思います。
塩がいっぱいついたわかめをボールにいれて、お水であらいます。
わかめはお水につけると、いっぱい増えるので、あまり出しすぎたらわかめだらけになるのでダメです。 少ないくらいでだいじょうぶです。
わかめをしっかり洗ったら、包丁で切ります。このままだと食べにくいからです。わたしは包丁をつかって、わかめをちゃんと切ることができるようになりました。
あぶらあげも、細長くきります。ちゃんと切らないと、下がつながって、おとうさんに笑われるので注意しないといけません。
具がきれたら、つぎに小さいおなべにお水をいれます。 おなべはいつも、台所のいちばん上のたなにあるので、おとうさんがとってくれます。
もうちょっと背が大きくなったら、ひとりでもとれるようになると思います。
お水をいれたおなべは重たいので、気をつけなければいけません。 このお鍋は持つところがぐらぐらしているので、注意しないと、お水がこぼれてしまいます。
お水をいれたおなべをコンロにおいたら、火をつけて、ぼこぼこと泡がでてくるまでまちます。 そうしたら、ダシのもとをいれます。ふくろの半分よりちょっと少ないくらいです。
わたしはこのダシのもとが大好きで、いっつもちょっとだけ手にのせて、ペロッとなめます。 しょっぱくておだしの味がしておいしいのです。でも、おかあさんに見つかったらおこられるのでないしょです。
ダシのもとを入れたら、さっき切ったわかめと油あげをいれます。
「やけどするぞ、きぃつけよ」
おとうさんは、いつもそう言います。
だいじょうぶ、だいじょうぶ。
さわったらアツいことなんて、知ってるのに、おとうさんはしんぱいしょうです。
あつあつのお鍋にいれると、わかめがパッと緑色になって、キレイです。 でもやっぱりちょっと多かったみたい。わかめだらけになりました。
そうしたら火をけして、おみそをいれます。ここからが、むずかしいところです。
おたまにおみそをちょっと入れて、おなべにチャポンとつけて、お湯をちょっとだけおたまに入れます。 それから、おはしでちょっとずつおみそをとかしていきます。
しっぱいしたら、とけてないおみそのかたまりがおみそしるの中にはいって、しょっぱくなってしまうので 注意しないといけません。
おみそをとかしたら、味見をします。味見をしながら、ちょっとずつおいしくしていくのです。
「これくらいかなぁ」
「ちょっとうすいんちゃうか?」
「ほんなら、これくらいかなぁ」
「もうちょっとやな」
「ほんまに?じゃぁ、こんくらい?」
「しょっぱい!しょっぱいなぁ」
「ほら、ゆうたやん」
しっぱいしたら、ちょっとだけお水をたして、うすめたらだいじょうぶです。
「これならどう?」
「よしよし!できたできた」
おとうさんの分と、わたしの分と、おわんによそって。
チャーハンもよそって、レンジでチンしたら、やっとお昼ごはんです。
「おいしいなぁ、おみそしるようできたやんか」
土よう日のいいお天気。テレビを見ながらおとうさんと一緒のお昼ごはん。明日はお休みです。どこにいこうか。
おいしいなぁ、おいしいなぁ、
おいしかったなぁ、お父さん。
あとがき
こんにちは。SATTYです。
父の日でした。今年はちょっとお高めの焼酎を、実家の父親に送りました。なんにもメッセージもつけずに、愛想のない娘やなぁと、そんなことを考えていたら、ふいに思い出された昔の風景。
小学生の私が、父と一緒にいっつも過ごしたふたりきりの土曜日。あの当時、父が唯一作れる料理は「おみそしる」で、母が帰って来たらふたりで作ったんだと自慢していたような、そんな記憶がうっすらと残っています。
あれは私にとっての、おやじの味やなぁ。まだ小さな子供だった私と、若かったおとうさんの土曜日のお話。
それでは、今日はこのへんで。
また、次のお話で。