マクドナルドのポテトはどのように食べるのか問題における、ある男女のトラブル
男女とは、進化し続ける奇跡である。
わたしのような若輩者が語るには少々大きすぎるテーマであるが、今夜は勝手ながらこの男女という生き物について、真面目に語ってみたいと思う。
マクドナルドのポテトはどのように食べるのか?
男女を語るために、まず考えていただきたいことがある。わたしの記憶では確か10年以上前から、根深い問題として議論されていること。
『マクドナルドのポテトはどのように食べるのか問題』である。
引用元:McDonald's Japan
今のところ、わたしの周辺においてマクドナルドのポテトを食べたことがない人はいない。みなが、小さなころから親しみ愛し続けている味の一つだと考えている。
ケンタッキーじゃないねん。マクドのポテトが食べたいねん。
これは、わたしの故郷で頻繁に発せられるワードである。太さ、塩気、食感、そのすべてにおいて、人々は大きな関心をよせている。
まったく男女に触れないままにここまで書き連ねていることから、ある程度は察していただきたいのだが、わたしもまた、マクドナルドのポテトを愛する一人である。
物心ついたころから、わたしの側にはドナルド・マクドナルドがいたし、赤く光る唇に吸い込まれそうになった。「アイム ラビニ!」これを耳にしたら条件反射で体がポテトを欲するまでに成長してしまった。
このポテトには、大きく二つの派閥があると思っている。カリカリ派とへにゃへにゃ派だ。
スナック菓子ばりに水気のとんだ、カリカリのポテト。時に口中攻撃をしかける凶器と化すカリカリしたやつ。これを愛するのがカリカリ派だ。
対して、やや黒ずんだロングサイズで、持ち上げると同時にへにゃへにゃと腰を折るへにゃへにゃポテト。歯ごたえや香ばしさから最も遠い場所にいる、このへにゃポテにも熱狂的なファンは多い。わたしはこの派閥に属している。
ちなみに、世の中には、このどちらの派閥にも属さない猛者たちもいる。食べれたらいい派だ。わたしはこれをまだ認めていない。
さて、長らくお待たせした。わたしのポテト愛について知っていただいたところで、本題に入ろう。
今日お届けしたいのは、これほどまでに人々のこだわりに満ちたマクドナルドのポテトをめぐる、男女のトラブルにまつわるお話である。
ある男女のマクドナルド事件
わたしはS子。大好きなD夫さんと一緒に暮らしています♪
ー彼らはどこにでもいる、平凡で平和な男女だった。
土曜日のお昼ゴハン嬉しい♪今日も明日もふたりで一緒に過ごせるんやもん♪
D「お昼どうする?マクドにせーへん?」
S「いいねいいねーー♪」
息ぴったりのふたり♪一緒にマクドナルドまでドライブして、ドライブスルー。お持ち帰りをして、おうちで一緒に新喜劇みながら食べるんだ♪
マクド「ご注文どうぞー」
D「ビックマックセット」
S「ダブルチーズバーガーセット♪」
マクド「ただいまポテトLサイズに無料でできますがいかがですかー?」
D「そんな食べれへんやんな」
S「うん!大丈夫でーす」
ブウゥゥゥゥゥウウン
ーこうしてふたりはドライブスルーで購入したマクドナルドを両手に抱え帰路につく。これから起きる惨劇など知らずに。
S「いいにおいーーーーー」
D「食べよー」
ふたりでテレビを見ながら、パクリ♪おいしぃ〜〜〜〜!
わたし、ポテトが大好き♪中でも、へにゃんへにゃんのポテト、めっちゃスキーーー♪
あ・・これはカリカリ。これもやー、一本パクリ。おいしいけどー♪
あー!へにゃへにゃあったー、あとで食べよ♪ふんふ〜〜ん。
<TV 『ナンデヤネン!』・・ドッ(笑い声)>
D「あっはっはっ」
D夫さん、超楽しそー。・・・・え?ポテト食べるん、めっちゃ早いやん。もう半分ないやん。
ーこの時、S子は胸の中で「イヤな予感」を感じたという。虫の知らせとはこのことだと思った・・それが後日S子から聞かされたセリフだ。
えっえっ、いっぺんに3本も口にいれるん?てゆうか、もうポテトの方見てないやん。カリカリーとかへにゃへにゃーとか、そういうのないん?手が勝手にポテトとって口に運んでるだけやん。もっと大事に食べな・・
D「うまいな」
S「う・・うん。」
ーボソボソとダブルチーズバーガーとポテトを食べるS子。そしてついにその時がやってくる。
・・・ガサガサガサ・・
!!!!!!!!
わたしの・・!ポテト・・・・!!
食べたよねぇ、今、わたしのポテト、食べたよねぇ!!ちょっと待って!大事に大事に食べてんのに?なんで?なんなん?それなら、Lにしたら良かったやん。なんて言ったらいい?ダメって言ったら、怒るかな。どうしよ、そんなん言われへん。いやや、でもポテト・・
D「あっはっはっ」
S「・・・・・」
ーS子はあまりのことに、食べることを忘れて言葉を失い、ただD夫によって荒らされていくポテトを見つめた。彼が食べれたらいい派の猛者だということは、言わずもがな、だ。
D「なんなん?どうしたん」
S「・・・・」
D「なんやねん」
S「・・・・・」
ーながれる気まずい空気。そのとき、彼女の愛するへにゃへにゃに、D夫の指が伸びた。
S「・・・しのポ・・・」
D「なに?」
S「・・・たしのポテ・・・」
D「なんて?」
S「わたしのポテトォォォォォォォオ!!!!」
D「・・・・あ、これ?ごめんて、ごめんごめん。なんや、あはは」
ーD夫はS子のポテトを食べることをやめた。S子はボソボソとまた、ポテトを食べ始める。彼の横顔が、心なしか寂しそうに見えて、S子の胸は痛んだ。
なによ。めっちゃ減ったし。モグモグ。食べすぎやって。モグモグ。へにゃへにゃとっておいたのに。モグモグ・・・。
・・D夫さん、食べたらあかんて言われてなんか、かわいそう。おいしくない、なんか。ポテト・・・
S「・・・これ、いいよ。」
D「ええよ、食べ」
S「いい、あげる。」
D「ほんま?ありがとー」
へ、へへへ・・・。D夫さん、笑った。よかった。次からは、もう絶対Lサイズにしよ。
S「あ、へにゃへにゃや!これ食べる」
D「食べー、これが好きなん?」
S「うん」
D「これもへにゃへにゃやでー」
S「ほんまや、カリカリのやつは食べていいで」
D「おー」
S「あっ!そのへにゃへにゃ!」
・・・
男女の絆はこうして深くなっていく
さて、この話を聞いてもらっていかがだろうか。
女、めんどくさすぎ?Yes!話ちっちゃいだろ?Yes!その通りだ。
たかがマクドナルドだと、思うことだろう。しかし、男女のすれ違いなんて、突き詰めれば本当に小さなものなのだ。
生きてきた時間も場所も環境も異なる男女が、ともに暮らせばこんなささいな感覚の違いは山のように出てくる。そういう一つ一つを寄せ合っていくやりとりが、ふたりの関係を作り上げていく。
そんなちっぽけなことすら歩み寄れなければ、いずれほころびが出るだろう。そんなちっぽけなことを共に積み重ねていけば、いつしか固い絆になるだろう。
好みや価値観を少しずつ伝え合っていくこと。それを放棄しては関係など育たない。
思いのほかに真面目なことを語ってしまったようだ。少し恥ずかしい。とにかくわたしはこれが言いたかった。
それでは今日はこのへんで。
また、次のお話で。